ドローンによる空からの直播 スマート稲作が進化している。

ドローンによる空からの直播 スマート稲作が進化している。

数年後には、AIトラクターとAIドローンによる大規模農業が主流になるだろう。

そうした場合、農業従事者は減っていくことになるのでは?

低コスト稲作へ 空から直まき 10アールわずか7分で 適量・均一が鍵

 

静岡県浜松市の加茂文俊さん(51)は、2019年にヤマハ発動機などと協力してドローン直播に取り組み始めた。田植え機のアタッチメントで作業する一般的なたん水直播も行うが、「ドローンなら、田植え機の車輪がはまるような深い田でもすんなり作業できた」と評価する。

実際、10アール当たり7・5分のスピードで種まきが終わり、育苗や苗の運搬作業もなく省力的だ。19年はクッションとして水を張った水田に、鉄被覆したもみを土壌表面に播種した。多収品種の「あきだわら」の収量は10アール当たり670キロ。移植と同等で十分だった。ドローンは追肥や防除にも使え、導入に費用はかかるが、活用の幅は広い。

20年は落水した水田でべんモリ(べんがらモリブデン)被覆したもみを土壌の中に突き刺す方法を試した。品種は「きぬむすめ」で、ドローン直播面積を20アールから85アールに拡大した。ところが播種後、もみをハトやカラスに食べられる被害が多発し、収量が大きく減ってしまった。落水した水田の土壌表面に凸凹などがあり、うまく埋まらなかったのが原因とみる。

鳥害を受けなかった水田では、収量は10アール約450キロと移植と同等で良かったものの、粒が小さく品質は悪かった。7月の長雨と8月の高温の影響に加え、加茂さんは「10アール当たり4キロの播種量が多過ぎて、過繁茂となった」と話す。21年は播種量を同3キロとする予定だ。ドローンも購入し収量同500キロを目標として挑戦を続ける。

農研機構でスマート農業コーディネーターを務める原嘉隆さんは、ドローン直播では播種量を多くしないよう注意すべきという。直播栽培の稲は移植より分げつが多く過繁茂になりやすい。保険をかけて多めに播種すると失敗につながる。

特にドローンの散播では、種の落下位置にむらができやすい。密になった場所では倒伏などのリスクが高まる。播種量は適正とした上で均一にまくよう心掛ける。倒伏防止には、遅効性だけにするなど減肥も有効だ。

農水省は水田リノベーション事業で10アール当たり4万円を交付し主食用米からの転換を支援する。輸出・加工用米では、低コスト生産などの取り組み15項目うち3項目以上を満たすのが要件。項目には「直播栽培」と「スマート農業機器の活用」があり、同省はこれにドローン直播も当てはまるとする。(岩瀬繁信)