茨城の観光果樹農家 コロナ禍で最大の苦境に

産経新聞のイチゴ農家さんの記事。

東日本大震災、昨年の台風15号・19号の被害を乗り越えた矢先のコロナショック。

イチゴの観光農園を運営する農家さんに数棟、大型ビニールハウスを納品しているだけに、胸が痛いです。

 

茨城の観光果樹農家・中村剛さん コロナ禍で最大の苦境に 「せっかくのイチゴが…」

こんなひどい状況は35年間、イチゴを作っていて初めてだ-。茨城県石岡市内で観光農園を営む中村剛さん(58)にとって試練の日々が続いている。

新型コロナウイルスの感染拡大は、観光や農業にも影響を及ぼしている。これからの季節は例年、首都圏から美しい景観とともに味覚を求めて県内へやってくる人も多かった。ウイルスはそうした茨城の魅力をPRする場も失わせている。

常磐自動車道土浦北インターチェンジを降りて朝日トンネルを抜けると、新緑の山々が広がる石岡市八郷(やさと)地区が広がる。同地域は皇室への献上柿の里として知られ、さまざまな果物狩りを楽しむことができる。

ここで中村さんが経営する「中村いちご園」は大型連休中、多くの車や大型バスで駐車場があふれかえるはずだった。「今年はコロナの感染拡大で、週末でも2~3人しか来ないこともある。来園者はいつもの10分の1だ」と頭を抱える。

今シーズンは、東京方面からのはとバスの運行が40台以上もキャンセルとなった。八郷地区のイチゴ狩りと国営ひたち海浜公園(ひたちなか市)に青く咲き誇るネモフィラの花、あみ・プレミアムアウトレット(阿見町)での買い物のセットは、募集と同時に予約がいっぱいとなる人気の観光コースだった。

中村さんは「今年のイチゴのでき具合は粒の大きさも甘さも最高。だが、どんなに待っても客がほとんど来ない…」と嘆く。

過去にも苦難はあった。昨年は台風15号、19号が襲来。施設の被害は少なかったが、浸水で苗が腐ってしまった。このため、今年は30アール(9棟)あったビニールハウスを25アール(6棟)に縮小し、よりイチゴの質の向上に力を入れた矢先にコロナ禍に見舞われた。

平成23年の東日本大震災では、東京電力福島第1原発事故による放射能汚染の風評被害で観光客がほとんど来ないこともあった。

「震災の(風評)被害は、がまんしていれば、いずれ客がやってくるだろうという終わりが見えた。今回は先が見えないだけに厳しい」と顔を曇らせる。今回の被害がイチゴだけでなく、ブルーベリーやブドウ、柿などこれから旬を迎える地元の作物にも及ぶことを心配する。

全世帯へのマスクの配布が始まったが、「そんなことに莫大(ばくだい)な予算をかけるより、新型コロナの問題を早く解決することに使ってほしい」と手厳しい。現在は観光農園のイチゴの一部を市場へ出荷し、しのいでいる。常連客の「イチゴはビタミンCが豊富で、免疫力を高めるのにいい」という言葉が救いだ。

中村さんは「みんなの力で一日も早く新型コロナの感染を収束させ、そして1人でも多くお客さんに来てほしい」と切実に願う。(篠崎理)

◇なかむら・たけし 昭和37年、茨城県石岡市(旧八郷町)生まれ。石岡市でサラリーマンをしていたが、22歳で脱サラして父が経営していた観光農園「中村いちご園」に勤める。現在は園主、平成28年から「やさと観光果樹組合」の組合長も務めている。

産経新聞 2020/05/02より