2020年までの5年間で、災害査定の対象となった農地や農業用施設の被害額は全国で約7863億円に上り、少なくとも86%が豪雨・台風災害によるものであることが、農水省への取材で分かった。特に6月下旬から7月にかけては、豪雨災害が頻発しているため警戒が必要だ。(丸草慶人)
全国の農地・農業用施設の被害額は、5年連続で1000億円を超えている。16年は熊本地震の被害が大きかったものの、17年は九州北部豪雨、18年は西日本豪雨、19年は台風19号、20年も7月豪雨と、大きな豪雨・台風被害があった。
とりわけ6、7月は豪雨が多発し、注意が必要だ。20年の7月豪雨は7月4~7日に九州で記録的大雨になり、熊本県では球磨川が氾濫。被害金額は農地・農業用施設で1017億円に上った。18年の西日本豪雨は6月28日~7月8日に岡山、広島、愛媛県などが被災。河川の氾濫や土砂災害で被害金額は同1383億円に上る。17年の九州北部豪雨も7月5、6日に福岡、大分県などが被害に遭い被害金額は同400億円となった。
復旧長期化のケースも
19年10月の台風19号も含め、大きな豪雨・台風災害の発生は4年連続。同省の20年度の災害復旧事業は、当初予算と補正予算を合わせ過去10年で初めて1000億円を超えた。同省防災課は「災害が頻発し、工事計画を見直したり、復旧が長期化したりするケースもある」と説明する。
気象庁によると、7月にかけては「線状降水帯」が多く発生し、大きな豪雨災害の原因になっている。太平洋高気圧に押し上げられた前線に南側から湿った空気が吹き込み、積乱雲が発達。同じ場所に長時間、激しい雨をもたらす。
同庁は今年から、線状降水帯の発生が確認された地域の速報を開始。また、避難のタイミングを分かりやすくするため、警戒レベル4(危険な場所から全員避難)で出す避難情報を「避難指示」に一本化した。同庁気象リスク対策課は「線状降水帯の発生で人命に関わる危機が生じることがある。早めに避難してほしい」と話す。