農業における生産者と経営者の境目

 

日本農業新聞の記事。新型コロナウィルスの危機をふるさと納税や寄付金を活用して乗り越えようとしている農家さんと自治体の事例。

コロナの影響にはじまった話ではないが、こういった動きは今後も目立ってくると思われる。すべての農家さんが恩恵を受けられるわけでなく、行動に移せる農家さんだけ。農業も会社経営もいっしょであり、経営に失敗すると基本的にはだれも助けれはくれない。国策として生産者、農地を守る、拡大するという予算があるので、しっかり国や自治体を活用しながら、ピンチを切り抜ける経営をする必要がある。

生産者と経営者、今後の農業業界はこの二つの境目がより濃くなっていくのだろうと思う。

 

苦心の自治体・農家 寄付金が突破口
営農×流通シリーズ

和牛新型コロナウィルスの感染拡大防止で外食業界が振るわず、和牛の消費は低迷している。枝肉価格が下落し、再生産が難しい状況だ。その中でふるさと納税を活用して返戻品での消費拡大や、寄付金を使った生産支援に取り組む自治体が出てきた。支援を励みに、農家は経営改善に努める。

三重県多気町は、ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」で寄付を募り、集まった資金を塗丘の子牛導入費用の補助に活用する方針だ。今出荷している肥育牛は、東京五輪・パラリンピックを見据えて高値で導入した子牛が育ったもので、枝肉相場の下落は農家への影響が大きい。同町は「農家が生産を続けていけるよう前向きな支援にしたい」(農林商工課)と強調する。

「松阪牛がつなぐ絆プロジェクト」と題し、20日時点で5000件を超える寄付が集まっている。サイト内では、畜産農家らが置かれている厳しい状況を説明。返戻品の「松阪牛」を2倍に増やし、寄付者と離れてクラス家族や友人に半量ずつ届け、消費拡大にもつなげる。
同町和牛部会部会長の藤原浩さん(59)は、「いくら良い肉質の牛を作っても採算割れの状態。子牛は高くても肉質や血統を考えて選ぶ必要があり、補助があれば助かる。長期的な支援をお願いしたい」と力を込める。

宮崎県新富町で特産品開発などを手掛ける地域商社・こゆ地域づくり推進機構は、4月17日から5月10日までに期間を限定し、「ふるさとちょいす」で畜産農家応援企画「GO!こゆ牛」を展開した。
同町などの地元農家とJA児湯が立ち上げたブランド「JAこゆ牛」を返戻品とし、寄付を生産者支援に役立てる。口蹄疫を乗り越えてきた生産者の思いや飼養管理の工夫などをサイト内に掲載し、寄付を呼び掛けた。

同町で肥育牛500頭などを買う壱岐ファーム専務の壱岐秀隆さん(34)は「2年前に80万円で買った子牛が、肥育して出荷しても80万円にしかならい。飼料費や人件費がそのまま赤字だ。消費がのびることが今一番必要なこと」と訴え、消費拡大を歓迎する。

全国有数の和牛産地、鹿児島県志布志市も、枝肉価格の急落で影響を受ける産地の現状を訴えながら、同サイトでふるさと納税での支援を募っている。
返戻品にはブランド和牛「鹿児島黒牛」を用意。寄付金を活用し、肉用牛肥育経営安定交付金(牛マルキン)の農家負担分を2分の1以内(1頭当たり2万円上限)で支援する他、学校給食に牛肉を提供することを決めた。

日本農業新聞 2020/05/21より