他業界から農業に 後継ぎこそ他業界の経験を

ITなど他業界からの農業進出はよく見られるが、後継ぎの子どもが他業界からを経験してから農業に従事するパターンが理想だと思う。

農家の子だから、親の背中を見て農作業だけ覚えるといった時代は随分前の話で、別分野のスキルを農業に生かしていくことが重要。

新規就農は軌道に乗るまで大変だが、すでに基盤がある既存農家こそ、後継ぎに農業以外の経験をしてもらい、戻ってきてもらう。という考えはありだと、思う。

 

[未来人材] 35歳。SEの経験生かし観光農園を効率化 IT化で経営改善
日本農業新聞より 2020年08月16日

元SEの経験を生かし経営改善につなげた鈴木さん(愛知県岡崎市で)
愛知県岡崎市でブドウ観光農園「幸果園」を営む鈴木康博さん(35)は、大学で培った経営学の知識や元システムエンジニア(SE)の経験を生かし、経営の改善や効率化につなげている。インターネット販売を始めて軌道に乗せ、受付や料金計算などの業務をIT化した。祖父が開いた農園を今後も維持し、発展させていこうと奮闘する。

幸果園は1・6ヘクタールで31品種を栽培する。「デラウェア」「巨峰」などのブドウ狩りと直売が経営の柱だ。鈴木さんは2017年に親元就農した。東京でSEとして働きつつ、いずれは農園を継ごうと考えていたという。

鈴木さんは「栽培に手間を掛ける分、バックオフィスの業務を効率化したいと思っていた」と話す。ブドウ狩りの受付では、来場者の年齢や人数を基に手計算で行っていた料金の受け取りを、タブレット端末のレジアプリに切り替えた。計算間違いの心配がなく、客の待ち時間もなくなり「効率が3倍ほどになった」という。

インターネット販売では、個人や家族単位の注文が増えたという。これまで注文は電話かファクスだけで、農場では団体客の購入が多かった。ホームページ(HP)を刷新して販売ページと連携させ、売り上げ増につなげた。HPでは写真を多用し農園を詳しく紹介。取材が増えるなど、予想外の効果も生まれた。

栽培面では父から技術を学び、手間を掛けた分だけ形になる農業の面白さと大変さを実感している。数字とにらめっこの業務が多かった前職に比べ「おいしかった、とお客さんから言われるのは励みになる。栽培の苦労が報われる」と笑う。

農園は鈴木さんの祖父が開き、50年以上の歴史がある。近隣でブドウを栽培していた仲間と「岡崎駒立ぶどう狩り組合」を設立。今では市内外から人が集まる一大ブドウ狩りエリアとなった。

鈴木さんは経験を買われ、組合の広報担当を務める。「組合のメンバーとはいえ、自分はまだ見習い。父の技術を受け継ぎつつ、時代に合った経営の在り方を取り入れていきたい」と展望する。
農のひととき
小学生の娘をたまに農園に連れてきて、作業の合間などに一緒に遊んでいる。農園には遊具やアスレチック場もあり、子どもが遊べる環境は整っているという。農作業を手伝ってもらった時には、駄賃として菓子をあげたりもしている。

音楽を聴くのも好き。休憩時間や、季節によっては自宅から農園までの約1キロを歩き、その間に音楽を聴いている