大雪被害がもたらす農村への被害 秋田県

秋田魁新報社さんの記事。

今シーズンの記録的な大雪の被害は、地域の農業全体の衰退にも影響を及ぼしかねないという、深刻な内容だ。

対応策を自治体やJAなどが考えるが、高齢化と担い手不足という根本的な問題にプラス自然災害。ベストな解決策はあるのだろうか?

 

社説:果樹の大雪被害 園地若返り目指したい
2021年3月27日 掲載

今冬の記録的な大雪は、県南部を中心に甚大な農業被害をもたらした。県のまとめでは今月16日現在の被害額は約38億円。パイプハウスなど農業生産用施設の損壊が大半を占める。

今も園地が雪に覆われているため、県南の果樹被害はまだ一部しか明らかになっていない。2011年の大雪では全県の農業被害58億円のうち、県南を中心とした果樹関係が42億円に上った。今回も額が大幅に膨らむのは必至だ。営農意欲を失うことのないよう被害状況に応じたきめ細かな支援が求められる。

本県の主力果樹であるリンゴは、11年の大雪で全栽培面積の65%が被害を受けた。枝をボルトで固定するなどして修復しても回復までに3、4年ほどかかるケースがあった。

新たに苗木を植え替えた場合は収穫までには4、5年を要した。未収穫の期間も防除などの経費が必要となることから、それを回収して収益を上げるまでには8、9年が必要だったという。

このように同じ木から毎年収穫する果樹は、ひとたび被害を受けてしまうと復活まで長い期間と労力を要する。種や苗から育てて毎年収穫する一年生作物との最大の違いだ。10年前の雪害から立ち直ろうとする中で、再び大雪に見舞われた生産者の落胆は察するに余りある。

再生には、適切な植え替えによる園地の若返りが欠かせないと指摘する専門家は多い。例えばリンゴの木は数十年にわたって収穫可能だが、豪雪地帯の県南では度重なる雪害で傷み、収量が落ちている老木も目立つ。樹勢が盛んな若い木に植え替えれば、高温や長雨など他の自然災害からの回復も早いという。モモはリンゴ以上に大雪に弱い上、被害木の実は小ぶりで食味も劣ってしまう。

園地の若返りは、生産性の高い木をより多くそろえ、園地の収益性を高める取り組みだ。今回の雪害を、植え替えを進める機会と捉えることが必要なのではないか。生産者は行政、JAなどの関係機関と一丸となって園地再生を目指してほしい。

このほか、老朽化したブドウ棚やサクランボ用ハウスなど設備を更新・補強し、雪に強い園地の実現にもつなげたい。雪害対策として県は、植え替えや施設復旧の支援策を用意、これに補助を上乗せする市町村もある。国の自然災害支援を含め、各種制度を活用して経営基盤を強化することが求められる。

10年に2930ヘクタールだった県内の果樹栽培面積は、年明けの雪害を経て11年は2760ヘクタールと大幅に減少した。規模縮小や営農断念を余儀なくされた生産者も相当数いたとみられる。

生産者の高齢化が進む中、今回も同様の動きが出てくれば、産地の衰退に拍車が掛かることになる。産地を守るためには、園地の若返りを進め、それを次世代に引き継いでいくことも必要だ。