観光業者が農家に「助っ人」 自治体やJAと連携

毎日新聞の記事より。

新型コロナウィルスの影響で打撃を受けている観光業と農業をマッチングさせた取り組み。

旅館の中居さんが、ビニールハウスでラッキョの収穫を手伝う。このような光景が全国各地で見らせそうです。

こういったときに、存在感を出していけるようなJAや自治体などがある地域は、今後、発展していくと思います。

 

毎日新聞2020年6月2日より

 

観光業者が農家に「助っ人」 人手不足補い大活躍 ラッキョウやナシ収穫

新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けている観光業。その働き手たちが、慢性的に人手不足の農業の現場で一時的に活躍する動きが全国で広がっている。収穫の最盛期を迎えるラッキョウの産地・鳥取県北栄町では、名湯「三朝(みささ)温泉」(同県三朝町)の旅館従業員がラッキョウの根を切る「切り子」に転身するなど、観光業と農業の新たな接点が生まれている。

休業旅館の仲居が
シャキ、シャキ――。鼻にツンとくるラッキョウのにおいが充満する同県北栄町のビニールハウス。岩本照美さん(53)は収穫されたラッキョウの形を整えるため、専用の包丁を使って一つずつ丁寧に根や茎を切っていた。5月中旬から働き始めたばかりでまだ不慣れな手つきだが「難しいけど面白い」と顔をほころばせる。

本来の勤務先は三朝温泉の旅館。ベッドメーキングや食事を運ぶ仲居の仕事をしていたが、新型コロナの影響で同旅館も加盟する三朝温泉旅館協同組合は5月の1カ月間、休業を決めた。岩本さんら従業員は一定の補償を受けるが、従来の給料にはほど遠い。

同組合は、休業中の旅館やホテルに従事する人たちの雇用を確保しようと、三朝町などに相談。慢性的な人手不足に悩んでいたJA鳥取中央も同町などに相談しており、行政を介して初めて「マッチング」に取り組み、約20人がラッキョウ農家やスイカの選果場で働くことになった。

特にラッキョウ農家は切り子の不足が長年の悩みだった。5月中旬から6月中旬の収穫期に集中的に人手が必要になる。生産者の山脇篤志さん(50)は1・7ヘクタールで34トンの収穫を見込むが、昨年は切り子が足りず約2トンを廃棄した。今回、男女5人を受け入れ「今年は全て出荷できそう」と胸をなでおろす。

6月からは旅館の営業が再開したが、まだ旅行客がどの程度回復するか見通せず、岩本さんは切り子の仕事も時々でも続けていきたいという。「生活が不安だったから本当に助かったし、食の大切さや農家の苦悩も知ることができた。旅館に戻っても何かの形で貢献したい」と話す。

ラッキョウ以外にもスイカの選果場は7月中旬まで続き、8月中旬からは二十世紀ナシの収穫が始まる。JA鳥取中央・農業人財紹介センターの金山孝信さんは「コロナの第2、第3波が来ても同様にマッチングを図り、双方の業界で支え合っていきたい」と意気込む。

マッチング続々
同じくJA佐久浅間(長野県佐久市)は地元の軽井沢旅館組合から相談を受け、宿泊施設の従業員とキャベツやレタス農家とのマッチングを開始。4月下旬から働き始めた人もいるという。

他にも青森県が4月10日、休業状態の観光施設の従業員らと県内の農業法人をマッチングする「農業労働力ワンストップ相談窓口」を新設。従業員は勤め先に籍を置いたまま、県特産のリンゴや野菜農家で短期アルバイトとして働ける。倒産による失業者らを対象に通年雇用の相談にも応じるという。

同県構造政策課の担当者は「地方の観光業は、地元特産の食べ物を前面に出すことも大切で、農業との相性はいい。従業員が旅館などに戻った時に地産地消メニューを考案してもらうなどの相乗効果を期待している」と話す。【阿部絢美】